
アスベストの見分け方はいくつかありますが、専門家でないと見分けるのが難しく、健康被害のリスクもあります。それでも確認したい場合は、図面や仕様書、着工年などをチェックしましょう。確実に判断したいのであれば、専門業者に依頼すると確実です。
この記事では、アスベストの見分け方を解説します。さまざまな見分け方を組み合わせれば、安全かつ確実にアスベストの有無を特定できるでしょう。
【この記事で分かること】
・アスベストを見分ける難易度
・アスベスト含有の確認方法
・アスベスト含有が疑わしい場合の対処方法
アスベストを見た目で見分けるのは難しい
アスベストは、含有される建材によって色や形が異なり、使用される箇所もさまざまです。そのため、専門的知識や機器を用いず、目視だけでアスベストの有無を判断することは困難です。
また、アスベストの繊維は非常に細かく、飛散したものを肉眼で捉えることはできません。たとえ劣化していないように見えるアスベスト含有建材であっても、わずかな損傷によって繊維が飛散し、健康に影響を与えるおそれがあります。
アスベストの見分け方
アスベストの有無や危険性を見分ける方法は、以下のとおりです。
- 外見の特徴から判断する
- 劣化状態から判断する
- 図面・仕様書から判断する
- 建材の使用年代を確認する
- 着工年から判断する
- メーカーの資料確認や問い合わせで判断する
- 過去の事前調査の結果から判断する
- アスベストマークで判断する
- 分析調査を行う
それぞれ見ていきましょう。
外見の特徴から判断する
アスベストを含む建材のなかには、特徴的な色や質感、形状を持つものがあります。
例えば、吹付けアスベストは綿状で柔らかく、青石綿(クロシドライト)や茶石綿(アモサイト)を含む場合は、特有の色が見える場合があるでしょう。また、折板裏打ち断熱材はスポンジ状やウール状といった特徴があります。
しかし、多くの建材は類似品と見分けがつきにくく、変色や汚れているケースも多いため、見た目だけでの判断は難しいのが実情です。
より正確に見分けるには、ほかの方法も検討しましょう。
劣化状態から判断する
引用:アスベスト含有建材の特徴・見分け方等 - 山口県ホームページ
表面が毛羽立ったり、繊維が崩れたり、垂れ下がっていたりする場合は、アスベストが劣化しているサインです。また、下地とアスベスト層のあいだに隙間やはがれ、凹凸が生じている場合も同様です。
吹付けアスベストや石綿が含まれた保温材、保湿剤などが劣化すると、繊維の結合力が弱まり、垂れ下がりや下地からのはがれなどが生じ、繊維が空気中に飛散しやすくなります。見つけたら速やかに専門業者に相談しましょう。
図面・仕様書から判断する
引用:石綿(アスベスト)含有建築材料 シンポジウム2004中小規模物件での使用と対策の実情
アスベストが建材に使用されているかどうかは、平面図、断面図、構造図、仕上表などの設計図書や仕様書から判断できます。書類に記載された、使用された建材の名称や品番、施工箇所を国土交通省のデータベースと照合して判断しましょう。
ただし、実際の施工が図面通りに行われなかったり、既存の建材が撤去・変更されたりした場合は、元の図面に情報が反映されていない可能性があります。現地調査(目視調査)と照らし合わせ、現在の建物の状況と一致するかを確認しましょう。
建材の使用年代を確認する
建材が製造・使用された年代が分かれば、アスベスト含有リスクを判断するうえで重要な手がかりとなります。具体的には、アスベストが使われ始めた1950年代から、使用が禁止された2006年9月より前までの建材には、含有リスクがあります。
かつて建材として広く使われたアスベストですが、健康へのリスクが問題視されるようになったため、段階を踏んで使用が制限されました。具体的には、1975年に含有率5%以上の吹付け材の使用、1995年には含有率1%以上の建材の使用が禁止されています。
また、アスベストの製造や使用は2006年9月に完全禁止されました。
着工年代から判断する
2006年9月以降に着工された建築物には、アスベスト含有建材が原則として使用されていません。この日以降に着工されたと書面で確認できれば、事前調査の一部を省略できる場合もあります。
ただし、2006年8月までに工事が始まった建築物には、アスベストが使用されている可能性が考えられます。
着工年代は「登記事項証明書(登記簿謄本)」の表題部にある新築年月日や、建築確認申請時の「建築確認済証」から確認可能です。
メーカーの資料確認や問い合わせで判断する
使用されている建材のメーカー名や商品名が特定できる場合は、製造メーカーのWebサイトや製品資料を調べたり、直接メーカーに問い合わせたりすることで、アスベストの有無を確認できます。ほかにも、製品ラベルや取扱説明書にアスベスト含有について記載されている場合があります。
過去の事前調査の結果から判断する
過去に実施したアスベスト事前調査に関する記録が存在する場合は、その情報をもとに判断できる場合があります。ただし、調査が建物のどの範囲を対象に行われたのか、調査の精度は十分だったのかという点は確認が必要です。
さらに、アスベストの定義や含有率の基準値は年代によって異なります。古い調査で「含有なし」とされていても、現在の基準では「含有あり」と判断される可能性も考えられます。
過去の結果から判断する場合は、調査年月日と調査当時の基準を照らし合わせて、慎重に評価しましょう。
アスベストマークで判断する
引用:非飛散性アスベスト廃棄物の適正処理について | 法令・告示・通達 | 環境省
一部のアスベスト含有建材には、アルファベットの「a」をデザインしたアスベストマークが表示されています。このマークが確認できれば、その建材はアスベストを含有していると判断できるでしょう。
しかし、アスベストマークは生産業者が自主的に表示を始めたものであり、すべての含有建材に表示されているわけではありません。マークがない場合でも、アスベストが含まれている可能性があることは理解しておきましょう。
分析調査を行う
アスベストの有無や種類、含有率を確実に判断するためには、専門機関による分析調査が不可欠です。
分析調査では、専門の資格者が現地調査を行い、調査したい建材からサンプルを採取します。サンプルは分析機関に送られ、アスベストの有無(定性分析)や、その種類と含有割合(定量分析)を調べます。
「アスベストジャッジ」では、事前調査のサポートからサンプル採取、分析調査、結果報告までを一貫して提供。解体業者の知見を活かしたていねいなサポートが特徴です。
分析調査は、通常3営業日以内、お急ぎの場合は最短1営業日以内に対応可能です。分析費用は1検体14,000円(税別)となっており、全国からの依頼に対応しています。
初めてアスベスト事前調査を依頼する方や調査の進め方、試料の準備に不安がある方も安心してご相談ください。
アスベストの見分け方に関するよくある質問
ここでは、アスベストの見分け方に関するよくある質問に回答します。
アスベストを含まない建材の見分け方は?
アスベストと見た目が似ている建材として、ロックウールやグラスウールが挙げられます。主な違いは以下のとおりです。
名称 | アスベスト | ロックウール | グラスウール |
---|---|---|---|
主な素材 | 天然鉱物繊維 | 人造鉱物繊維(高炉スラグ等) | 人造鉱物繊維(ガラス) |
繊維の太さ | 極細 | 太い | 太い |
手触り | 繊維状が残る | 粉々になる | チクチクする |
お酢への反応 | 溶けない | 溶ける | 一般的に溶けない |
有害性(発がん性) | 高い (発がん性あり Group 1) | 単体では低い (Group 3) | 低い (Group 3) |
これらの見た目の特徴は非常に似ており、一見すると同じ素材に見えるかもしれません。
さらに古いロックウールのなかには、アスベストが混合されているものがあります。ロックウールだからといって、必ずしもアスベストが含まれていないとは限りません。より確実に見分けたいのであれば、専門業者に依頼しましょう。
戸建て住宅やマンションのアスベストの見分け方は?
戸建て住宅やマンションでアスベストを見分けたいのであれば、どこに使われているのかチェックしましょう。
戸建て住宅でアスベストが多く使用されている箇所は、屋根材(スレート瓦など)や外壁材(窯業系サイディングなど)、軒天ボード、内装の石膏ボードやパーライト板、床のビニル床タイル、煙突材などです。
危険性の高い吹付けアスベストが広範囲に使用されるケースは、戸建て住宅では少ないでしょう。
一方マンションでは、戸建てと同様の箇所に加え、鉄骨造の場合は柱や梁の耐火被覆として吹付けアスベストが用いられている可能性があります。また、駐車場や機械室、ボイラ室などに吹付けひる石が使用されている場合もあります。
石膏ボードに含まれるアスベストの見分け方は?
石膏ボードにおけるアスベストの有無は、製造年代が重要な手がかりとなります。特に1970年から1986年頃まで多く使用されていました。
ボードの裏面に製品名や防火材料認定番号が記載されているため、石膏ボード工業会のWebサイトや石綿含有建材データベースで照合してみましょう。
お酢を使ってアスベストを見分けられるって本当?
「アスベストはお酢に溶けないが、ロックウールは溶けるため、お酢をかければ見分けられる」といった意見もあります。
実際に、お酢を使う方法は一部の解体現場では簡易的な判別法として試みられる場合もありますが、アスベストを吸引するおそれがあるため、おすすめできません。
また、ロックウールが溶けてもアスベスト繊維は残るため、吹付けロックウールの場合は、判断を誤る可能性も高いです。より確実に見分けたいのであれば、ほかの方法を検討しましょう。
アスベストを見つけたらどうすれば良い?
アスベストと思われるものを見つけたり、アスベストの飛散が疑われるような状況に遭遇した場合は、以下のように対処しましょう。
- その場所に立ち入らない、近づかないようにする
可能であれば、その部屋や区画を一時的に使用禁止にしましょう。 - 換気をしない
窓を閉め、換気扇を止めるなどして、空気の流れを最小限に抑えます。 - 速やかに専門業者や自治体のアスベスト担当窓口に連絡する
詳しい状況を説明して指示を仰ぎましょう。
自己判断で物質に触れたり、掃除機で吸い取ったり、水拭きしたりすると、繊維を空気中に飛散させ、状況を悪化させる可能性があります。慌てず冷静に対応することが重要です。
まとめ
アスベスト含有の有無を見た目だけで判断するのは困難です。建材の使用年代や着工年代の確認、図面・仕様書の照合、メーカーへの問い合わせなど、複数の方法を組み合わせて判断しましょう。
ただし、専門知識が無いと判断しづらいのが実情です。アスベストの有無を正確に判断するには、専門機関による分析調査が必要です。特に建材に劣化が見られる場合や建物の解体・改修を予定している場合は、早めの調査をおすすめします。
アスベストの調査が必要であれば、「アスベストジャッジ」にご相談ください。急ぎの検査にも対応しており、1検体14,000円+税で対応可能です。
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