アスベストレベル3とは?ほかのレベルとの違いや調査方法・作業手順を紹介!

アスベストレベル3は、危険度が比較的小さいため、レベル1や2ほど厳重な対処は必要ありません。しかし、事前調査の実施と報告義務は、アスベストレベルに関係なく実施しなければなりません。

必要な作業を行わなかった場合、罰則の対象になるおそれもあるため、どのように対処すべきか事前に確認しておきましょう。

この記事では、アスベストレベルごとの対応の違いやレベル3の取り扱い、確認方法、除去までの手順などについて解説します。

【この記事で分かること】
・アスベストレベル3の特徴
・アスベストレベル3で必要・不必要な手続き
・アスベストレベル3の除去作業手順

目次

アスベストレベル3は最も発じん性が低い

レベル発じん性主な建材主な使用箇所対策方法
レベル1著しく高い石綿含有吹付け材柱、はりの耐火被膜天井、壁に吸音・結露防止用として吹付作業場所の隔離防じんマスク・保護衣の着用
レベル2高い石綿含有保温材耐火被覆材断熱材ボイラ本体や配管、空調ダクト断熱材レベル1に準じた高い暴露防止対策が必要
レベル3比較的低いその他の石綿含有建材天井、床、壁などの石綿含有成形板屋根材の石綿ストレート湿式作業発じんレベルに応じた防じんマスクの着用

参考:表 廃棄物処理法による飛散性・非飛散性の区分

アスベストは発じん性に応じて3段階に分けられており、レベル1が最も発じん性が高く危険であり、レベル3は危険度が比較的低めです。各レベルごとの特徴を順番に紹介していきます。

アスベストレベル1

アスベストレベル1は最も発じん性が高く、周囲に飛び散りやすいです。

アスベストレベル1が含まれている主な建材は石綿含有吹付け材で、昭和38年から昭和50年までの間に建てられた耐火建築物の耐火被膜材として使われているケースが多いです。

ほかにもビルの機械室、ボイラー室や体育館・講堂・工場などの天井や壁に吸音・結露防止材として使用されています。

アスベストレベル1は飛散して周囲に広がりやすいため、解体工事やリフォームの際は、作業場所を隔離して、飛散を防がなければいけません。また、作業者はばく露防止のため、防じんマスクと保護衣の着用が義務付けられています。

アスベストレベル2

アスベストレベル2はアスベストレベル1に次いで粉塵が飛散しやすいため、解体時やリフォーム時に対策が求められます。具体的には、石綿粉塵が飛散するリスクがある場合、建材の除去や封じ込めをしなければいけません。

アスベストレベル2が使用されている可能性のある箇所は、以下の3つです。

  • ボイラ本体や配管、空調ダクトなどの保温材
  • 建築物の柱・はり・壁などの耐火被覆材
  • 屋根用折版裏断熱材、煙突用断熱材

また、アスベストレベル2の建材は以下の年代まで使用されていました。

  • 石綿含有の保温材:1980年頃まで
  • 耐火被覆や断熱材:1989年頃まで
  • 煙突用石綿断熱材:2004年頃まで

アスベストレベル3

アスベストレベル3は比較的飛散リスクが低い石綿含有建材が該当します。該当する主な建材は以下のとおりです。

  • 石綿含有成形板
  • 石綿含有仕上塗材

石綿含有成形板とは、建物の天井・床・壁に使用されるアスベストやセメントで成形された建材です。石綿含有仕上塗材は、外壁や内壁の下地を守るために塗装する塗材に含まれています。

アスベストレベル3の建材を除去する際は、作業場所を隔離する必要はなく、簡易的な保護衣のみでの対応が可能です。

ただし、除去する建材を手で慎重に取り除き、建材の破損を極力避けるていねいな作業が求められます。

アスベストレベル3の取り扱い

アスベストレベル3の取り扱いは以下のとおりです。

  • 事前調査の実施と報告義務は変わらない
  • 一部の書類の届出が不要になる
  • 除去作業時の飛散防止措置が軽減される
  • 除去、解体工事の費用が抑えられる

アスベストレベル1,2とは異なる部分もあるため、各項目の内容をしっかり把握しておきましょう。

事前調査の実施と報告義務は変わらない

アスベストレベル3は比較的発じん性が低いですが、事前調査と一部をのぞく調査報告は義務化されているため、必ず実施しなければいけません。

以前は義務化されていませんでしたが、石綿含有建材が見落とされるケースがあったため、法改正により2022年4月1日から事前結果報告が元請の義務となりました。

さらに、2023年10月からは「石綿含有建材調査者」による調査報告も義務付けられています。

事前調査結果の報告は以下の条件にあてはまる場合のみ必要です。

解体工事部分の床面積の合計が80m2以上の建築物の解体工事
請負金額が税込100万円以上である建築物の改修工事
請負金額が税込100万円以上である特定の工作物の解体又は改修工事

 引用元:石綿事前調査結果報告システムについて

ただし、アスベスト事前調査の対象外となるケースもあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

一部書類の届出が不要になる

アスベストレベル3が対象の作業では、以下の3種類の届出が不要です。

  • 特定粉じん排出等作業実施届出書
  • 建設工事計画届
  • 建築物解体等作業届

※全てアスベストレベル1、2では必要

ただし、自治体によっては別途指定された届出書の提出が必要となる場合があります。わからない場合は自治体の窓口に問い合わせて、漏れなく手続きが完了できるようにしましょう。

除去作業時の飛散防止措置が軽減される

アスベストレベル1、2では飛散防止のため、作業現場の隔離が必要ですが、アスベストレベル3では隔離の必要はありません。アスベストレベル3に該当する建材は、アスベストが強固に結合しているため、そのまま除去する場合は飛散しないからです。

しかし、切断や破砕すると粉じんが発生するため、解体作業場の周囲をパネルやシートで覆い、湿潤化による飛散防止対策が求められます。着用するマスクや保護衣は、アスベストの飛散が少ない作業の場合は、取り換え式防じんマスクと作業着で問題ありません。

除去、解体工事の費用が抑えられる

アスベストの除去作業は、処理面積により費用が異なります。レベル3で3,000円/㎡程度、レベル2は1~6万円/㎡程度、レベル1は1.5~8.5万円/㎡程度です。

アスベストの処理面積ごとの除去費用の目安は下表のとおりです。

アスベストレベルアスベスト処理面積除去費用
3300㎡以下90万円程度
300m2~1,000m90万円以上
1,000㎡以上300万円以上
2300㎡以下300万円以下
300㎡~1,000㎡300万円以上
1,000㎡以上1,000万円以上
1300㎡以下450万円程度
300㎡~1,000㎡450万円以上
1,000㎡以上1500万円以上

レベル3の作業費が安いのは、除去するための準備として更衣や洗身施設の設置が不要で、養生費や封じ込め処理費、高額な廃棄物処理費用もかからないためです。

アスベストレベル3の確認方法

アスベストレベル3で必要な事前調査の方法は以下のとおりです。

  • 書面調査
  • 目視調査
  • 試料採取・分析調査
  • みなし判定

事前調査はアスベストレベルに関係なく実施しなければいけません。調査内容を把握し、自社で実施するか、外部に依頼しましょう。

アスベスト調査についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

書面調査

まずは対象となる建物の施工図や設計図などの書面による調査を行います。書面以外にも建物の関係者や建設に関わった業者などからヒアリングを行い、より詳しい情報を収集することもあります。

ただし、年代によっては石綿含有成形版や石綿含有仕上げ塗材が使われていても図面に記載されていないケースもあります。

そのため、後述の目視調査とあわせて実施する必要があります。

目視調査

目視調査では、現地に行き、書面調査で調べたとおりかどうかチェックします。

書面から得られる情報と、実際の建物の状態が一致しないケースは少なくありません。例えば、建物によっては完成後にリフォームや修復を行い、図面と異なる建材が使用されている場合があげられます。

また、建物によっては施工図や設計図の保存状態が悪く文字が読み取れなかったり、そもそも図面を紛失していたりすることもあります。その場合も現地で目視調査が必要です。

試料採取・分析調査

除去する場所にアスベストが含まれているかどうか判断するために、建材から試料を採取し分析会社に調査を依頼します。成形板の試料を採取する際はカッターで5cm×5cmに切り取り、密閉できる袋に入れて調査会社に送ります。

費用は、試料採取を自分で行った場合は1件体当たり1~5万円程度、書面調査からサンプル分析まですべて依頼した場合は数十万です。

なお、法改正により2023年10月以降、試料の採取には「建築物石綿含有建材調査者」や「アスベスト診断士」などの資格が必要になりました。資格保有者がいない場合は、試料採取の段階から調査会社に依頼するか、社員に資格を取得してもらわなければいけません。

みなし判定

みなし判定とは、分析調査を行わず、除去予定の建材にアスベストが含まれているものとして除去作業を行うことです。アスベストのレベルに関係なく、石綿含有建材データベースや公的な資料などをもとに判断します。

調査費用分のコストカットにつながりますが、除去作業はアスベストが含まれたものとして実施するため、万が一建材にアスベストが含まれていないと、不必要にコストがかかってしまいます。

また、みなし判定で作業を行う際は、最も厳しい措置を講じて作業しなければいけないため、作業場所の隔離や防護具、建材の処理費用が高額になってしまいます。

そのため、みなし判定を行うかは、アスベストが含まれる可能性が高いと判断できた場合にかぎり実施するのがおすすめです。

アスベストレベル3の除去、解体工事の手順

アスベストレベル3の除去・解体工事の手順を紹介します。

  1. 事前調査
  2. 除去作業準備
  3. 除去作業
  4. 事後作業

各工程について詳しく解説していくので、漏れがないよう1つずつ確認していきましょう。

1.事前調査

アスベストレベル3でも事前調査の実施は必要です。先に紹介した書面調査と目視調査を行います。みなし判定で除去作業を実施する場合も、事前調査は省略できません。

また、前述のとおり下記の条件にあてはまる工事を請け負うときはアスベストの有無に関わらず、事前調査の結果の報告が必要です。

解体工事部分の床面積の合計が80m2以上の建築物の解体工事
請負金額が税込100万円以上である建築物の改修工事
請負金額が税込100万円以上である特定の工作物の解体又は改修工事

 引用元:石綿事前調査結果報告システムについて

2.除去作業準備

事前調査が終わったらアスベストレベル3に応じた除去作業に必要な準備を行います。準備内容は以下のとおりです。

項目内容
作業計画の作成安全管理体制
作業の方法および手順
粉じんの発散を防止し抑制する方法
作業者への粉じんばく露を防止する方法
アスベスト濃度の測定
廃棄物の処理方法
周辺環境対策
作業主任者の選定石綿作業主任者技能講習を修了した人のなかから石綿作業主任者を選任する
作業者の教育作業者に対してアスベストの粉じん発散の抑制や保護具の使用方法について教育する
保護衣アスベストレベル1,2で使用する保護具または作業衣でも良い
マスクアスベストレベル1,2で使用するマスクまたは半面形防じんマスク(RL2またはRS2使い捨て不可)

参考:廃棄物処理施設解体時等の石綿飛散防止対策マニュアル

アスベストを含む建材を除去する際は、作業計画を作成し、関係者に計画を周知し計画にしたがって作業しなければいけません。また、作業中に事前調査とは異なる状況を把握した場合は、作業計画を適宜見直し適切に作業します。

上表で紹介した保護衣やマスクは、発じんが小さい場合や手ばらしで作業する場合にのみ許可されています。アスベストレベル1や2では不十分な装備になりますので、ご注意ください。

3.除去作業

除去作業は以下の順番で行います。

  1. 作業場の養生 
    • 屋外の場合:解体作業を行う周囲をパネルやシートで加工 
    • 屋内の場合:窓などの開口部をテープで目張りしプラスチックシートなどで隙間をふさぐ
  2. 湿潤化
    • 石綿含有成形板に直接散水・噴霧し飛散しにくくする
  3. 除去作業

アスベストレベル3の除去作業では、建材をそのままの形で除去することが望ましいです。これは、石綿含有成形板を破損したり、切断したりするとアスベストが飛散する可能性があるからです。

万が一に備えて除去した建材はできるかぎり湿潤化した状態にし、破損しても飛散しにくい環境で作業をします。

4.事後作業

除去作業が終わったら、作業現場を真空掃除機で破片やくずを残さないように清掃します。
使い終わったマスクや保護具はプラスチック袋などに入れ、石綿含有産業廃棄物として処理するのが一般的です。

また、除去した建材は産業廃棄物として扱います。廃棄する際は「非飛散性アスベスト廃棄物」と表記し、ほかの廃棄物と混載せず産業廃棄物処理施設に直送します。

まとめ

アスベストレベル3は、危険度が低く、レベル1や2のように厳重な対処は必要ありません。しかし、事前調査の実施と報告義務は、アスベストレベルに関係なく実施しなければなりません。

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